グローバル化・複雑化する現代の資本主義経済の特質と仕組みを理解することは,自身の雇用や生計のために切実な課題
近い将来,市場経済と向き合うことになる高校生にとって,グローバル化・複雑化する現代の資本主義経済の特質と仕組みを理解することは,自身の雇用や生計のために切実な課題です。
ところが「わかりやすさ」を売り物にしている経済書で,「自由放任の市場経済がなぜ豊かな社会を実現し得るのか」という肝心の問いに的確に答えているものが少ないのが現状です。むしろ巷には,市場メカニズムへの「勝ち組」「負け組」なる語に象徴されるように,経済学の説く「競争」「効率性」等の語を曲解した言説が溢れています。それらの論調は社会経験の未熟な高校生に社会への歪んだイメージを抱かせるだけでなく,経済学的見地からも明らかに妥当性を欠いています。
本書の第2 部はこうした現状を踏まえ,本格的に経済を学ぶのは初めてとなる高校生が,市場経済の仕組みと特質を,利点も欠点も含めて的確に理解すること,高校生にも関心の高いであろう政府の累積債務問題や金融問題,社会保障問題など近年の経済問題・経済現象も冷静に判断する能力を涵養すること,を主目的としています。