執筆陣の強化をはかって,近年進展した研究成果を積極的に記述に取り入れた
ソ連・東欧社会主義圏の崩壊後,「歴史の終わり」を唱える論者が注目され,アメリカ合衆国の一人勝ちに見えた状況から,アメリカ帝国論がさかんになったのはつい先日のことでした。
しかしその後の世界的変動は,そうした議論を色あせたものにし,未来の方向すら見いだしにくい混沌とした状況がなお続いています。こうしたなかで,新しい世界史教科書を執筆することは,これまで以上に気を遣いました。しかし,一方ではそれは,執筆陣の強化をはかって,近年進展した研究成果を積極的に記述に取り入れる機会ともなり,やりがいのある挑戦でした。
ヨーロッパ史で,近代前期を近世として独立した時代区分としたこと,アメリカ史関連の記述を刷新したこと,さらに日本史関連部分を日本史専門家に精査してもらうことができたことも,改善と考えています。本書が教育現場で十分に活用されることを願っています。