「アラブの春」のアクチュアリティ エジプト1月25日革命を中心にみるグローバリゼーション下の日常的抵抗

価格
7,150円 (税込)
在庫: 未刊
解説: 「アラブの春」から10年以上の時が経った。2011年初め、その磁場の一つとなったエジプトの首都カイロのタハリール(解放)広場は、若い男女を中心とする人々で埋め尽くされ、シュプレヒコールや演説のほか、即興の歌や詩の朗読、グラフィティー、そしてテント村がいたるところに渦巻いていた。だが今日、タハリール広場に立つということは、廃墟の前にたたずむかのようである。広場に充溢していた熱気や喧騒は跡形もなく、かつての情念はのちに置かれた記念碑へ無理やり封じ込められ、過去のものとして葬り去られたかのようだ。「アラブの春」や「エジプト1月25日革命」の諸成果も、つぎつぎと覆されてきた。
しかし、ちょっと待っていただきたい。我々はそもそもあのとき何が起こったのか、本当に知っているのだろうか。それどころか、その後の負の結果から逆算して、歪んだレンズから物事を視てはいないだろうか。「アラブの春」や諸革命によって生じたことと、その後に反革命の旧勢力や「外国」勢力によってもたらされた破綻が混同されすぎてはいないだろうか。日本にいた我々は、当時、何が起こっているかをよく把握していなかっただけでなく、ますます実態と乖離したイメージを記憶に刻印しつつあるのではなかろうか。そして、それ以上に重要なのは、この変動が今もなおアラブ世界をこえて地球大の連鎖反応に直結して多大な影響を与えつづけていることであろう。本書は、今改めて、「アラブの春」の実態や諸成果、そして人々の営為を、時間的・空間的に把握する試みである。

※2024/7/30新刊配本予定
ISBN:
978-4-634-67262-8
著者: 大稔哲也編著  池田美佐子  竹村和朗  千葉悠志  萩原優  黒田彩加  三代川寛子  後藤絵美  鳥山純子  鷹木恵子  岡崎弘樹  山岸智子  早川理穂  内藤順子  師岡カリーマ・エルサムニー  齋藤剛  大坪玲子  馬場多聞  上山一 
刊行予定:
2024年7月
仕様: A5  ・  384ページ
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目次:
 序言
 総論  ストリートを生きるグローバルな身体――「エジプト1月25日革命」を中心にみた「アラブの春」の歴史人類学  大稔哲也

第Ⅰ部 歴史のなかの「アラブの春」 
 第1章 エジプトと民主主義――議会・憲法・革命の歴史から  池田美佐子
 第2章 群衆の力、組織の力――2011年3月の憲法改正とは何だったのか  竹村和朗
 第3章 「国家のイデオロギー装置」の揺らぎ?――政治変動と新旧メディアの役割検証  千葉悠志
 コラム① 「アラブの春」は革命なのか?――フランス革命史からの問い  早川理穂
 コラム② 革命大陸ラテンアメリカからみた「アラブの春」  内藤順子

第Ⅱ部 もつれあう革命のアクターたち
 第4章 「4月6日運動」の貢献と限界  萩原優
 第5章 1月25日革命以降のイスラーム諸勢力の競合と言説――信仰と権力をめぐって  黒田彩加
 第6章 「1月25日革命」とコプト正教会――民主化とマイノリティ問題の不協和音  三代川寛子
 第7章 革命と女性――エジプト2011年革命の最初の1年間をふりかえる  後藤絵美

第Ⅲ部 日常性と身体からみた「アラブの春」――「アラブの春」のフィールドへ
 第8章 家族関係から考える、広義の「1月25日革命」  鳥山純子
 第9章 「エジプト1月25日革命」における自警互助組織の創発的形成  大稔哲也
 コラム③ 映画にうつる革命の息吹――「エジプトの二人の娘」より  後藤絵美
 コラム④ 詩が刻んだエジプト革命  師岡カリーマ・エルサムニー
 コラム⑤ 「アラブの春」の音楽  大稔哲也
 コラム⑥ 続・「アラブの春」の音楽  大稔哲也

第Ⅳ部 空間的比較のなかの「アラブの春」
 第10章 「チュニジア革命」と空間的比較考察の試み  鷹木恵子
 第11章 抵抗の「源泉」から考える「シリアの春」  岡崎弘樹
 第12章 抗議する民衆の行動主体と文化的営為――イランとエジプトの比較から  山岸智子
 コラム⑦ モロッコと「アラブの春」  齋藤剛
 コラム⑧ 忘れられた春――イエメン  大坪玲子
 コラム⑨ イエメンの「アラブの春」にて  馬場多聞
 コラム⑩ 混迷深まるリビアからみえるもの  上山一

おわりに