西洋倫理思想の考え方

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1,980円 (税込)
在庫: 在庫あり
解説: よく生きるとは何か。幸福とは何か。
それは私たちの人生の究極目的である――。
ソクラテス、プラトン、アリストテレス、アウグスティヌス、トマス・アクィナス、カント、ベンサムらの哲学的思考のプロセスを丁寧に解きほぐして追体験する、「大人の倫理学入門」。


先行きがひどく不透明で、日常生活そのものさえ簡単に様変わりする時代、さまざまな価値観や考え方がある現代社会で、私たちはなにを指針に生きるべきだろうか。私たちが生きるうえで従うべきふるまいや生きかたを指し示す「倫理」とは、本当はどのようなものなのだろうか。
そうした問いが避けがたく差し迫ってくるそのときにこそ、「倫理」を学び直すことの意義が芽ばえてくる。
本書では、「哲学」の中核部門として発展してきた西洋の倫理学から、古代ギリシア、キリスト教、カント、功利主義の思想を取り上げる。「よく生きるとは何か」「幸福とは何か」という問いを道標に、それぞれの「哲学的思考のプロセス」を丁寧に解きほぐして追体験する、「大人の倫理学入門」である。
ISBN:
978-4-634-64097-9
著者: 池松辰男 
刊行:
2022年5月
仕様: B6変(120×182㎜)  ・  312ページ
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目次:
まえがき                                   
イントロダクション
「倫理」とはなにか/西洋倫理思想史をたどるにあたって――道標としての「幸福」/「よき生」
読書案内

第一章 古代ギリシア・ローマの倫理思想――幸福であるとはどのようなことか      
1 倫理学の問いの源泉(一)――ソクラテス
はじめに――一つの時代の黄昏/「知を愛し求めること」のはじまり――ソクラテスの活動の原点/「知を愛し求めること」の意味――ソクラテスにおける哲学-倫理学の基礎

2 倫理学の問いの源泉(二)――プラトン  
ソクラテスからプラトンへ――ものの「よさ」を問うとはどういうことか?/プラトンの「イデア論」/「善のイデア」に向き直ること、あるいはプラトン的恋愛――プラトンの倫理思想①/いかに実践すべきかをめぐって――プラトンの倫理思想②/生のままならなさの自覚――プラトンと西洋倫理思想史
コラム 民主主義の時代のプラトン――「哲人王」の解釈をめぐって  

3 幸福と徳――アリストテレスの倫理思想(一)  
「アリストテレスからは立派な生を」――アリストテレスとその時代/善のイデア――再考――すべてに共通の「善」はありうるか?/すべてに共通の善ではなく、「人間にとっての善」を/生命という視点――「生きる」ということの意味をめぐって/人間の働きからの論証――「生きること」の問いから「よく生きること」への問いへ/「活動」とはなにか――アリストテレスの「幸福」の前提①/「徳」とはなにか――アリストテレスの「幸福」の前提②/アリストテレスの徳論① 思慮/アリストテレスの徳論② 性格にかかわる徳/アリストテレスの徳論③ 中庸
コラム 正義と友愛――他者との関係にかかわる徳と現代政治哲学  

4 アリストテレスの倫理思想(二)
徳ある人生の勧め/徳倫理学――現代における「徳」のルネサンス/アリストテレスの倫理学の課題①  「人間らしく」生きれば幸福なのか/アリストテレスの倫理学の課題② 英雄時代のあとに、徳は再生可能か  
5 ヘレニズム以降の倫理思想――ストア派の場合
「もしアレクサンドロスでなかったら……」――世界市民の誕生/ストア派における「自然」――自然に従って生きる/ストア派の倫理思想――「星とともに走っている者のように、星の運行を眺めよ」/「宇宙の片隅」を生きる――ストア派とグローバル時代の生
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第二章 キリスト教の倫理思想――私たちは幸福でありうるか
1 アウグスティヌス(一)
はじめに――キリスト教の倫理思想と哲学/ローマとキリスト教――「西欧の教師」アウグスティヌスとその時代/アウグスティヌスの半生① 愛欲と別れを巡る苦悩/アウグスティヌスの半生② 別れの避けがたさと、自己の弱さの自覚

2 アウグスティヌス(二)
徳ある人生を考え直す① 徳は本当に万能か/徳ある人生を考え直す② 徳の意味すること/徳ある人生を考え直す③ 真の徳とはなにか/時間と時間を超えるもの――アウグスティヌスの時間論①/時間と分散する生――アウグスティヌスの時間論②/神のうちに安らうこと――アウグスティヌスの時間論と幸福論/神への愛――アウグスティヌスにおける実践の基礎①/隣人愛――アウグスティヌスにおける実践の基礎②/アウグスティヌスの遺産――恩寵と自由意志
コラム 地上の政治社会はなにをすべきか――「旅人」たちの政治思想

3 トマス・アクィナス
 中世のキリスト教哲学――プラトンとアリストテレス、再び/アリストテレスの哲学・再考――事物はなぜ生成変化するのか?/自己の完成としての幸福――トマスにおける「幸福」の基本①/再び、この世において幸福でありうるか?――トマスにおける「幸福」の基本②/「神の似姿に向かって」――トマスにおける「幸福」の基本③/トマスの徳論① 倫理的徳/トマスの徳論② 対神徳/恩寵は自然を破壊せず、完成させる/知と信仰の関係、再び――中世の終わり、あるいは近代の始まりへ
コラム 付随的被害は許されるか?――トマスの二重結果説と現代
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第三章 カント倫理学――私たちは幸福に値するか
1 「自由」と「科学」の時代の倫理学――カント倫理学の基本前提
近代化と「自由」――カントとその時代/自由と決定論の問題① キリスト教哲学の場合/自由と決定論の問題② 近代自然科学の場合/自由と決定論の問題③ カントの場合/自然科学はなぜ可能なのか?――カントの認識論/カントの認識論のもう一つの意味――自由を救うために

2 「自律」としての自由と定言命法
「なすべきであるがゆえに、なすことができる」――当為と自由/自由の法則としての倫理の法則を求めて/カントの「定言命法」① 定言命法の基本/カントの「定言命法」② 定言命法が意味すること/カントの「定言命法」③ 定言命法と意志の自律としての自由

3 カント倫理学の検証 定言命法の特徴と課題
 定言命法の意義――近代の「自由」を問い直す/定言命法の特徴と課題① 形式主義/定言命法の特徴と課題② 動機主義/定言命法の特徴と課題③ 動機主義と「幸福」の不在の問題
コラム カントの法論と徳論――法律になければなにをしてもよいか?

4 最高善、再び――カントの幸福論
 カント倫理学の特徴――幸福と倫理の分離/なぜ幸福は倫理の原理にならないか――カントの幸福論①/私たちは「幸福に値する」のか?――カントの幸福論②/一つの手がかり――定言命法のもう一つの方式をめぐって/カントの「最高善」――倫理と幸福のすみわけと接点/世界市民、再び――カントの生涯
コラム 神は人に報いるのか?――応報倫理の魅力と危うさについて
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第四章 功利主義――幸福は計算できるか                   
1 快苦のバランスシート――功利主義の基礎
功利主義の誕生とその時代① もう一つの「革命」/功利主義の誕生とその時代② ベンサムの生涯とその活動/功利主義の基礎① 功利性の原理/功利主義の基礎② ベンサムの「オリジナリティ」?/功利主義の基礎③ 幸福を量化する/功利主義の基礎④ 快楽計算とその前提/ベンサムのフィクション論――倫理を語るとはどういうことか/ベンサムのあとで――功利主義の流行の時代へ

2 功利主義の展開
功利主義の「わかりやすさ」/動物は倫理の対象となるか?――功利主義の前提が意味すること/動物を解放せよ――功利主義的動物倫理と現代社会/功利主義と利他主義――困窮を助けないことは不正か? 

3 功利主義の課題の検証
幸福は本当に数えられるのか?(一)――快楽主義の問題/幸福は本当に数えられるのか?(二)――快楽は一種類だけか?/集計結果がすべてなのか?(一)――帰結主義の問題/集計結果がすべてなのか?(二)――分配原理の欠如の問題/なぜ集計結果に従うべきなのか?(一)――利己主義の問題/なぜ集計結果に従うべきなのか?(二)――功利主義は利己主義を説得できるか
コラム 「隠れて生きよ」――快楽主義の賢者たち
コラム ロールズの正義論――現代政治哲学の火付け役
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終章       
あとがき
索引