狩野芳崖 受胎観音への軌跡

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解説: 日本美術を護った男達の愛と苦悩の物語。文部官僚の苦悩、フェノロサ伝説の真相など近代美術史の常識を根底から覆す労作「受胎観音」制作への軌跡をたどる。
ISBN:
978-4-634-15029-4
著者: 中村愿 
刊行:
2013年5月
仕様: 四六判  ・  456ページ
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目次:
はじめに
   芳崖没後一二〇年の節目/"フェノロサ伝説"の影/双方の思惑/
   芳崖と岡倉覚三の出遇い/死面が語るもの/《飛翔天女》の出現

第一章 伝統が育んだ異端児
 一 長府藩御用絵師の息子
   おおらかな父と慈愛深き母/長州の大内氏・毛利氏/
   手本は雪舟から/十五歳で《馬関真景図巻》を描く/
   若がきの絵馬/『本朝画史』/中国の画論に画心を養う/
   参禅体験
 二 江戸木挽町画所
   佐久間象山のことば/画所での猛烈な修行/
   松代藩絵師・三村晴山/"五世界"につながる意識/見覚えがき/
   画所からの脱走/《牡丹図》の斬新な試み/秀頼に挑戦/
   駻馬の手綱を引くもの
 三 仏教画に打ちこむ
   安政四年の旅立ち/読書家だった芳崖/観音札所巡り/
   "仏の心"に近づく/いくつもの元三大師像/観音信仰の世界/
   元三大師とは何者か/"芳崖"の初使用は隠し落款/
   書は人なり/晴山の病死と象山の暗殺/
   激しい時代にそいつつ……/《八臂弁才天図》のまえに立つ/
   なぜ弁才天を描いたか/芳崖の"美術宗"/妙想の深化/
   弁才天から観音へ
 四 人物画と絵馬
   《鏻姫像》の大胆な構図/配色の妙/兄勝太郎の肖像/
   藩主のお側で/《駿牛図》は近代絵画

第二章 乱世に絵筆を捨てず
 一 三種類の山水画
   芳崖の作品と向かい合う/山水画を愛する理由/
   山に遊んで観察せよ
 二 雪舟に挑戦
   中国に画師なし/国宝《四季山水図巻》/傅抱石の指摘
 三 日本の山水画を目指して
   芳崖の雪舟山水臨写/日本人が漢画を模写すること/
   雪舟への疑問/雪舟の"日本の山水画"  
第三章 覚三、芳崖に出遇う
 一 藝術に魅入られた英語少年
   慈母の死/仏教への関心/婆やに吹きこまれた志士の精神/
   天才肌の兄/叔父は越前の能面打ち/西洋音楽の衝撃/
   モナリザに驚きバッハ、ベートーヴェンに哭く/
   早熟の東大生/炉辺での文学談義/学生結婚と"気狂い書生"/
   日本美術への開眼/大久保利通、暗殺さる/
   龍池会と観古美術会/九鬼隆一の出世/
   九鬼・浜尾・岡倉派の誕生
 二 芳崖、上京す
   訪れた転機/ふたりはいつ出遇ったか/学んで後に知る/
   フェノロサの通訳たち/有賀長雄の功罪/覚三の通訳の実力/
   岡倉なくしてフェノロサなし
 三 "フェノロサ伝説"の崩壊
   動きだした文部省の美術戦略/『大日本美術新報』の創刊/
   フェノロサの思惑/龍池会での講演/
   『美術真説』は日本人による作文/富豪ビゲローの来日/
   赤子の心で画く/初の出品はすべて選外/岡倉の決意/
   "フェノロサ伝説"の核心/
   鑑画会を組織したのはフェノロサではない鑑画会回想/
   古社寺調査の実際/フリーア宛書簡を解体する/
   芳崖の画を買い占める/"伝説"が浮かびあがらせるもの

第四章 日本画の可能性
 一 初子という女性
   少ない伝記資料/失踪した実父/わたしは十五歳で結婚した/
   覚三とのめぐり合い/才気にたけた品行端正な夫人
 二 自然は動いている
   芳崖の「観音」出現/西洋に向けて《観音》を画く/
   "円光を切る"について/五十七歳の春/
   草木国土は生きている/雪景色が多い理由/
   山水自然の意志をうつす
 三 華麗な構図と色彩
   "真正の主義"に生きる/第一回鑑画会大会/仏教画の新展開/
   "仏子"岡倉覚三/夢裡の"芳崖と覚三の対話"(第三篇)
 四 未完の《受胎観音》
   ルーブル美術館のモナ・リザ/船上での決意/帰国/
   日本近代美術史の事実/裸体をうつす/
   《悲母観音》に死力を尽くす/日本画の可能性

あとがきに代えて
図版目録